税務調査は、納税者が申告した所得金額が正しいかどうかを、総勘定元帳や補助簿、各種原始記録と照合し検討を行うことが大原則だが、帳簿の記載の不備や原始書類の保存状況が極めて悪いなどの理由から、納税者の資料では所得金額の検討ができないときは、納税者の生活状況や財産債務の増減、収支の状況、生産量、従業員数、同業他社との比較といった客観的な資料情報から所得金額を推計し、金額を決定する「推計課税」ができる。
現在この推計課税が認められるのは法人税と所得税のみだが、これを相続税にも広げようという動きが国税庁にある。国税庁が独自の意見書として財務省に提出した内容は、「相続開始以前の一定期間中に、被相続人の財産を処分または被相続人が債務を負担したもので、その使途が客観的に明白でなく、かつ、その合計額が一定金額以上となる場合は、これを相続人が相続したものと推定し、相続税の課税価格に算入する制度を創設する」というもの。
相続税の推計課税は、国税庁が2012年から3年越しで要望しているというが、3月20日に成立した2014年度税制改正法にも盛り込まれていなかった。しかし、2013年度税制改正において税率構造の見直しや基礎控除の引下げが行われるなど相続税への課税強化路線にあるなか、国税庁が簡単に諦めるとは考えにくく、2015年度税制改正でさらに強気の要望を載せてくる可能性は高い。今後の動きに注目しておく必要がある。
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