本年1月からの相続税大増税で、改めて生前贈与での節税・相続対策が注目されている。その一つに、賃貸アパート(建物)などの収益物件の生前贈与がある。収益物件の贈与で、贈与後の賃貸収入は子供のものになり、父親の相続財産の増加を防ぐ効果がある。それに賃貸収入分をきちんと貯めておけば、後々の相続税納税資金に活用できる。ただし、借入金や預り敷金があるケースでは注意が必要となる。
贈与税を計算する上での贈与財産の評価額は、一般的には「相続税評価額」となり、賃貸アパートの建物であれば、通常の取引価格(時価)よりも大分下がる。しかし、銀行等金融機関からの借入金が残っている状態で賃貸アパートを贈与すると「負担付贈与」となってしまい、この場合の賃貸アパートの評価額は、「相続税評価額」ではなく「通常の取引価額」で評価することになる。
同様に、預り敷金があるケースも要注意となる。敷金は、契約終了後は賃借人に未払がない限り返還されるものだ。建物の所有者が変わり、預り敷金の引継ぎがなかったとしても新所有者は当然に預り敷金を引き継ぐものとされている。そうすると、新所有者は建物という財産の贈与を受けると同時に、預り敷金の返還義務も引き継ぐことになる。
これは法形式上、「負担付贈与」に該当する。負担付贈与となると、相続税評価額ではなく通常の取引価格(時価)での評価となり、また、贈与した父親にも譲渡所得が課税される可能性もある。
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